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●藤田コーディネーター

 

福井さんは日本の都市交通の現状と問題点をどのように押さえていらっしゃいますか。

 

●福井先生

 

道路は、誰のものかというようなものを考えた時、今まで産業であり経済でありということで結局、太田さんもいわれたように人という視点が順番として随分と後の方になってしまっていたのだと思います。端的な例、毎朝毎夕とんでもなくストレスの高い状態が繰り返されており、マイカーはバスが邪魔だと思うし、バスはマイカーがいるので進めないと思う。それぞれ乗車している方も心の中でもやもやし、もしストレスに色が付いていたら都心部は一日2回ずつ真っ黒になっていると思います、排ガスだけではなくてです。
両者の反目というのは、不幸の反目というか、本当は敵同士ではないはずが。道路の容量さえしっかりしていれば、憎み合うこともなく、共存共栄ができて当然だと思いますが、単に容量が少ないとか、ネットワーク化されていないということだけで、毎日不毛な争いをつづけているのだと思います。この辺りを道路容量はピーク時に併せてつくると日本中を道路につくっても間に合わないので、量で解決するのではなく、ソフト面・システム面でなんとか解決できるのではないかと思います。

 

●藤田コーディネーター

 

國友さんはバス事業者の立場で日本の都市交通の現状をどのように考えていらっしゃいますか。

 

●國友先生

 

先程のビデオにもありましたように大変な交通渋滞を起こしています。これは大きな問題で、都市機能が大変低下しており、公益の阻害に直接繋がっていますが、バスの定時性・迅速性が非常に喪失してしまい、そのために運転者・車両の回転効率が悪くなり、その結果、コストが高くなり、運賃を上げざるを得ないとか、サービスがある程度低くなるというような状況を生み出しているのではないかと思います。定時性を確保できないことだけでも致命的なサービス低下ですが、このような状態ではますます公共交通機関バスの機能低下が進むのではないでしょうか。
バス事業者というのは、過疎も過密も私どもは両方もっているが、地方部でのモータリゼーションの進展によりバス事業の経営が難しくなり、運行回数を減らすことから、マイカーが都心部へ流人し、結局都心での交通量増加に拍車をかけているということがありますし、過疎バスに対する公的補助もありますが、これにより赤字部分を貯えない場合には、運行回数を減らしたり、運賃を上げたりというようなこともあります。
バス自身としては、都市部の利益で過疎を維持していくという内部補助という問題もあり、非常に難しくなってくるということです。都市部と過疎地とは因果関係が深いと私は思っています。ある資料で見ましたが、交通渋滞による損害額だけでも年間12兆円の損害であるということが書かれていました。原資を先取りしてでも公共交通優先の施策をとり、マイカーは便利だがある程度抑制しながら合理的な活用をしてもらうのがよいのではないかと思います。

 

 

 

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